行政書士試験から司法試験に挑戦するメリットは??

司法試験

司法試験と行政書士試験は、いずれも法律科目に関する国家試験で、共通する科目も多く、司法試験受験生が力試しとして行政書士試験を受けるケースも多く存在します。

また、弁護士になることができれば、行政書士として登録することもできるので、ダブルライセンスをもつこともできます。

この記事では、司法試験に挑戦する上で行政書士試験を受けておくことのメリットについて解説します。

1 弁護士と行政書士の違いは?

弁護士と行政書士の業務は大きく異なります。

まず、行政書士についてお話します。

行政書士の業務は、主に以下の2つになります。現役行政書士は、数ある中から自分の専門分野を絞って、その専門家として活躍しています。

① 官公庁への提出する書類等の作成

「建設業許可」「会社設立に関する書類」など官公庁に提出する書類を作成します。その他にも遺言書や示談書など、権利義務に関する書類作成もおこないます。

② 作成した書類の代理提出

官公庁への提出書類を、提出代行する仕事です。

また、行政書士として働くには、下表①、②の働き方があります。

行政書士事務所勤務

行政書士法人勤務

・使用人行政書士として働く

・行政書士業務をおこなう弁護士事務所なども含まれる

開業行政書士 ・行政書士事務所などへ就職し、経験を積んだのちに独立開業

・資格取得後すぐに独立開業

一般企業 ・法務部などで知識を活かして働く

・行政書士業務はおこなわない

③の一般企業に勤務する働き方では、行政書士業務はおこないません。行政書士登録には「勤務行政書士」という区分はないため、一般企業に就職しても、社内行政書士として業務遂行することはできません。自らの法的知識を活かして、法務部などで社内業務に従事することになります。

これに対して、弁護士の業務は、よくドラマでも弁護士が主人公で扱われることも多いため、行政書士の業務よりもイメージが湧くのではないでしょうか。

弁護士の仕事としては、大きく分けて以下の2つに分類できます。

①依頼者の法律相談に対して法的アドバイスを行う

②紛争解決のため、交渉、裁判手続きを行う

③刑事弁護などの弁護活動を行う

これらの全ての業務には、法的な書面を作成する場合も含まれます。また、これら以外にも、成年後見人としての活動や、遺言執行者としての活動をする場合もあるので、上記はあくまで弁護士としての主な業務になります。

行政書士も弁護士も、書類作成をすることが多いという点では共通していますが、弁護士は法的紛争に関わることが多いのに対して、行政書士は書類作成の代行をするなどの業務が多い点で異なります。

2 司法試験と行政書士試験の違い

(1) 試験の種類

司法試験と行政書士試験は、いずれも択一式、記述式がある点で共通しています。

もっとも、行政書士試験の記述式は、全部で3問の出題で数行程度のの回答が求められているのに対して、司法試験の論文式は、選択科目以外の科目(7科目)については8枚の答案用紙に論述しなければならないので、記述の量が大きく異なります。

(2) 科目の違い

司法試験は、全8科目(選択科目、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法)から出題されます。

これに対して、行政書士試験は、行政書士の業務に関し必要な法令等(行政法、民法、商法、基礎法学)と、行政書士の業務に関する一般知識(政治、経済、社会、情報通信、個人情報保護、文章理解)から出題されます。

司法試験は全て法律科目から出題されるのに対して、行政書士試験は、法律科目以外の一般教養も出題される点で異なります。

(3) 合格率の違い

行政書士試験の合格率は、おおむね10%以上です。しかし、難化して10%を割り切る年もあります。

試験年度 申込者数 受験者数 合格者数 合格率
平成25年 70,896 55,436 5,597 10.10%
平成26年 62,172 48,869 4,043 8.27%
平成27年 56,965 44,366 5,814 13.10%
平成28年 53,456 41,053 4,084 9.95%
平成29年 52,214 40,449 6,360 15.7%
平成30年 50,926 39,105 4,968 12.7%
令和元年 52,386 39,821 4,571 11.5%

一方、司法試験の合格率は、上昇傾向にあり、令和3年度司法試験では過去最高の41.5%でした。

受験者数 最終合格者数 合格率
平成24年 2012 8,387 2,102 25.06%
平成25年 2013 7,653 2,049 26.77%
平成26年 2014 8,015 1,810 22.58%
平成27年 2015 8,016 1,850 23.08%
平成28年 2016 6,899 1,583 22.95%
平成29年 2017 5,967 1,543 25.86%
平成30年 2018 5,238 1,525 29.11%
令和元年(平成31年) 2019 4,466 1,502 33.63%
令和2年 2020 3,703 1,450 39.16%
令和3年 2021 3,424 1,421 41.50%

両試験の合格率を比較すると、司法試験の方が合格率も高く、合格しやすいのではと思うかもしれませんが、行政書士試験は絶対評価試験(300点満点中180点以上とれれば合格)であるのに対して、司法試験は相対評価試験なので、受かりやすさという点では、行政書士試験の方が比較的難易度が下がることがいえます。

また、行政書士試験には受験資格がないのに対して司法試験には受験資格があるという点にも注意が必要です。

3 司法試験を受ける前に行政書士試験を受験するメリットは?

行政書士試験と司法試験は、共通している法律科目も多く、また行政書士試験に関しては受験資格がないため、司法試験受験生は、力試しとして行政書士試験を受けることのメリットは大きいといえます。

例えば、短答が苦手な受験生は、行政書士試験を受けることで、試験の緊張感を味わいながら受験することができ、また法律科目でどれだけ点数が取れるかを計ることで、司法試験本番の自信にも繋がります。

また、司法試験の試験対策をしていれば、一般教養を除いて、行政書士試験の出題範囲をカバーするので、行政書士試験のための試験対策をしなくても良いのです。

さらに、行政書士試験に合格することができれば、仮に司法試験に合格できなかった場合の保険にもなるので、精神の安定剤にもつながります。

他方で、司法試験に合格し弁護士資格を有することができれば行政書士としても登録できるようになるため、司法試験に合格してから行政書士試験を受けることのメリットはあまりないといえます。

4 弁護士と行政書士のダブルライセンスのメリット

実際に司法試験に合格し、弁護士になった後に、行政書士としても登録する、いわゆるダブルライセンスにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

弁護士資格が得られると行政書士としても登録ができるようになります。

しかしながら、業務の範囲という点においては弁護士の方が広いため実態としては弁護士として仕事をされる方が多いでしょう。

強いてメリットとして挙げるとすれば行政案件にも対応できる弁護士として地域に密着した仕事ができ、行政書士としての仕事も得られるという点が挙げられます。

地域に根ざした活動をしたいという方にとっては、弁護士の仕事だけでなく、行政書士としても働ける環境を選ばれるのも一つの選択肢になるでしょう。

5 サマリー

司法試験と行政書士試験は、いずれも簡単に合格できる試験ではありませんが、司法試験受験生であれば、行政書士試験をまずは受けてみるという方法もありだと思います。行政書士試験の勉強も、司法試験の勉強も、それぞれ相互に共通しているので、司法試験に合格できるか自信がないという方は、是非一度チャレンジしてみてくださいね。

6 まとめ

  • 行政書士は、いわゆる「書類作成のプロ」で、弁護士は、書類作成以外にも法的紛争の交渉や裁判手続きを行う専門家
  • 司法試験も行政書士試験も、択一式と記述式がある点で共通しているが、記述式は司法試験の方が分量が多い
  • 司法試験と行政書士試験は、いずれも行政法、民法、商法が共通している
  • 行政書士試験の合格率は10%~13%で推移しているのに対して、司法試験の合格率は、毎年上昇傾向にあり、令和3年度の合格率は41.5%
  • 司法試験受験生は、力試しとして行政書士試験を受験してみるのもおすすめ

 

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