残念ながら司法試験に不合格となってしまった場合、その受験経験は無駄になってしまうのでしょうか?
いいえ、そのようなことは決してありません。難関試験である司法試験にチャレンジするモチベーション維持力と長時間難解な学問に注いできた情熱や努力は就職活動に役立ちます。それだけに留まらず、今後の人生においても役に立つでしょう。
例え社会人経験が0であっても恐るに足らずです。
この記事では、司法試験に不合格となった場合でも、そして社会人経験0であっても未来を切り拓く方法について解説していきます。
是非、ご参考になさってくださいね。
1 司法試験に不合格でも受験経験は無駄にならない
司法試験へのチャレンジを考えた時に、「もし不合格になったらどうしよう。」などと不安に思われる方の方が多いかと思います。それは、いったいなぜなのでしょうか?
なぜなら、一昔前のイメージでは、司法試験に不合格となりいわゆる『3振(※)』してしまった場合の年齢や社会人経験の有無を考えて、受験へのチャレンジを躊躇してしまうといったケースが考えられたからです。
一般的には、法科大学院を卒業し司法試験に3振に差しかかってくる方が多いでしょう。人によっては、30代に突入している方もいらっしゃるかもしれませんね。社会人経験がなく30代前後で就職活動をする場合に不利となることが多かったのですが、現在は違います。昨今では、コーポレートガバナンス強化が多く謳われるようになり、法務部や総務部などでは法科大学院修了者の求人が少なくありません。司法試験受験経験者も然りです。
また、法律事務所の就職などでは、豊富な法律知識を備えていることがアピールポイントとなるでしょう。もし、仮に正社員としての就職が難しければ、派遣やパートアルバイトなどから入職し経験を積み、正社員登用のチャンスを得る道もあります。
一見すると遠回りのようにも思えますが、司法試験の受験経験を活かし、焦らずに着実に社会人経験と実務を身に付ける選択をすることが得策といえるのかもしれません。
※参照:法務省「新司法試験Q&A」
2 司法試験「不合格」の先の未来の切り拓き方
「司法試験に不合格だった・・・。」と落ち込んでしまう気持ちは本人にしか分からない辛さがあります。全身全霊で長期間に渡り難関試験に挑んでこられたのですから無理もありません。
しかしながら、これから先の未来を切り拓いて行くためには、あまり不合格であったことを引きずらずに気持ちを切り替えていくことも必要であるといえるのかもしれませんね。
今までの素晴らしい経験があるのですから、恐れるに足らずです!
一概にはいえませんが、以下で詳しく解説していきますので、是非ご参考になさってくださいね。
(1) 隣接資格取得の期待可能性が高まる(勉強のコツをフル活用)
例えば、隣接資格(司法書士や行政書士など)の資格取得を検討する方も珍しくありません。これまでの学習経験(勉強法やモチベーション維持など「勉強のコツ」)を活かすことができますし、比較的合格に近づきやすいといえます。法律系資格の有資格者であれば、就職に有利であることは勿論、独立開業も遠い夢ではありませんよね。
(2) 専門知識を活かす
求人先企業の業務内容に関する専門分野の知識と自身の習得した知識が合致していれば、有利に就職を進められる可能性が高まります。
例えば、ご自身の司法試験受験時の選択科目の分野が「知的財産法」などであれば、より専門性を活かしながら活躍できるでしょう。民法や商法、労働法なども、全ての企業にとって要となる法律であることは容易に想像がつくのではないでしょうか。そもそも、司法試験の学習科目は企業にとって切っても切れない重要なものばかりですよね。これらの高度な専門知識は誰もが有しているものではありませんので、この知識を活かせる場所はたくさんあるといっても過言ではありません。
一方で、法科大学院修了者かつ法学部以外の学部出身者の場合はどうでしょうか。法律と自身の専門分野を兼ね備えた人材として他者との差別化を図ることができますので、アピールポイントとなり有利に就職活動を進めることができるでしょう。
(3) 社会人としての常識を身に着けるための努力は必要
どのような職場でも社会人として働いていく上で、一般常識や最低限のマナーは必要です。
自分一人ではなく、仲間と共にルールの中で仕事を円滑に進めていかなければなりません。勉強とはまた違った難しさがあることも事実ですが、これらを避けて通ることはできませんので、そのための努力は怠らないようにしましょう。
また、企業で働く上でコミュニケーション能力は必須です。「この人と一緒に働きたい。」と思われるような人材を採用したいと企業側は考えていますので、その辺りを意識して面接に臨まれることをおすすめします。
(4) 自分の資質に合った就職先を探す
自分の資質があまりよく分からないという場合は、人材派遣会社などでプロのキャリアカウンセラーなどに客観的に判断してもらいアドバイスをもらうという方法もあります。「自分にでは分からなかったけれど、こんな長所があったのか!」などと新たな発見があるかもしれませんね。一方で、自分は得意だと思っていたことが実は大きな負担となっていることも考えられますので、長く働くことを考えると避けた方が良いのかもしれません。
例えば、一概にはいえませんが、コツコツと行う作業が得意であれば、契約書などの書面審査や作成、調査業務などのような法務職が適していると思われます。なぜなら、これらは、営業職ほどの対面でのコミュニケーション能力は求められないものの高い知識を要するからです。昨今では、リモートワークも普及してきましたので、コツコツと行う業務に適した環境が整いつつあり、対面でのコミュニケーションをとるのが苦手という方には向いているのかもしれませんね。
コロナウィルスの影響により、新しい働き方の定着化が進む中、対面でのコミュニケーションが苦手という方にとっては、ご自身の資質に合った仕事が見つけやすい環境にあるともいえるのかもしれませんね。
また、英語やコミュニケーション能力に長けていれば、グローバルに活躍できるチャンスがあるといえます。これまでの経験と知識を武器に積極的に就職活動にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
企業の大小だけではなく、業務分野や業務範囲についても着目して、幅広い視点でご自身の資質に合った就職先を探してみてくださいね。“人のいるところに法律あり”ですから、司法試験の受験経験を活かせる場所があるはずです。
3 司法試験不合格経験から得られるメリットとは
前述のとおり、難関試験である司法試験の学習経験は、隣接資格取得へのハードルを低く感じることが期待できます。司法試験と科目が重複している司法書士試験や行政書士試験などは比較的苦労せずに取得できる可能性があります。
なぜなら、学習未経験科目についても、司法試験受験経験で培ってきた『勉強のコツ』を活かすことができますので大きなアドバンテージとなるからです。
また、企業の面接時などでは、例え司法試験に不合格という結果であっても「頭が良い」「論理的思考力を備えている」「忍耐力がある」などと評価され有利に働くことがあります。
これらは、社会人としてとても大切なことですし、一朝一夕で身に付けられるものではありませんよね。企業側としても、自社で能力の高い人材を採用したいという要望がありますので、努力次第では企業の一翼を担う存在となることも夢ではないかもしれませんね。
つまり、『司法試験の受験(学習)経験』は未来を切り拓く大きな糧であり、何にも代え難い財産といえるのではないでしょうか。
4 サマリー
難関試験である司法試験にチャレンジすることは簡単なことではありません。心身ともにタフでなければならず、例え結果が不合格であったとしてもその経験は糧となり大きな財産となります。これまでの自身の貴重な経験を活かして、自信を持って未来を切り拓いていってくださいね。
5 まとめ
- 司法試験に不合格でも受験経験は無駄にならずアピールポイントとなるケースもある
- 司法試験「不合格」の先の未来の切り拓き方|①隣接資格を取得できる可能性が高まる②就業経験がない分、社会人としての常識を身に着けるための努力は必要③自分の資質に合った就職先を探す
- 司法試験不合格経験から得られるメリット|①学習未経験科目についても司法試験受験経験で培ってきたコツを活かすことができる②「頭が良い」「論理的思考力を備えている」「忍耐力がある」と評価され有利に働くことがある