最近、高い関心を集めている国家資格のひとつである「宅建」。土地や建物を取引する際に重視される資格で、正式には「宅地建物取引士」の名称で知られています。
宅建試験には受験資格がありません。広く門戸が開かれている資格だと言えるでしょう。そのため、法律の初学者や、他の法律系資格を目指す前の力試しで受験する人も少なくないのです。
そんな宅建士の試験に、独学で合格することは可能なのでしょうか。本記事では、独学する方にとって効率の良い勉強法やおすすめ教材などを考えいていきます。
1 宅建に独学で合格できる?
宅建合格者の中には、独学で試験に臨んだ人も多いとよく言われています。
毎日決まった時間を確保して、書店で購入した参考書や過去問で着実に勉強すれば、時間はかかっても合格を掴むことはできるでしょう。
では、具体的にどれくらいの時間をかけて、どのように勉強を進めていけばよいのでしょうか。次の項から順に詳しく解説していきます。
2 宅建に独学で合格するために必要な勉強時間は?
宅建合格までの勉強時間は、個人差は当然ありますが、およそ300〜400時間と言われています。これをクリアするには、1日2時間で半年かかる計算です。ここからは、過去問を使って勉強時間を3段階に配分する方法をお伝えします。
(1)「過去問を読む」時間
試験勉強を始める段階で意識すべきは、問題の傾向、難易度、出題者の意向を知ることです。そのために、まずは過去問を「読む」ことから始めましょう。
問題と解説を並べて、問題と選択肢を読んでから解説を読みます。このようにして過去問を何年分か読むと、ぼんやりゴールが見えてくるはずです。
ちなみに、テキストを読んで知識を蓄えてから問題を解く「インプット→アウトプット式」で勉強すると、合格するためのゴールがわからず、覚えるべきポイントもおさえられません。知識のインプットから始めるのは、非常に効率が悪い方法なのです。
(2)「全体像をつかむ」時間
法律とは、全体像を把握しなければ理解できない部分がある特殊な学問です。最初はわからない部分があっても、気にせず勉強を進めていきましょう。
2周目になると1周目でわからなかった部分がわかるようになっているはずです。そこから、民法、業法、法令上の制限、その他関連知識で使われている各単元を意識して勉強すると、より高い効果が生まれるでしょう。
これまでの勉強方法と異なるので困惑する方も多いかもしれません。しかし、法律はそういうものだと割り切って勉強することが重要なのです。
(3)「過去問を解く」時間
知識の定着には、何度もアウトプットすることが重要です。
宅建試験は、過去問と非常によく似た問題が繰り返し出題されるので、問題の勘所を瞬時に見極める「解答力」を養うことが合格へのカギとなります。試験問題の傾向をチェックし、出題の意図を考えるところまで意識してみましょう。
そうすることで、本番の試験で過去問にないような問題があっても、出題意図が考えられれば焦らず対応できるようになります。
過去問の正誤だけでなく、その理由を説明できるまでの知識を身につけるのもポイントです。最低でも5年分の過去問を、ひたすら解きましょう!
3 宅建試験を独学で突破するオススメの勉強法
独学の場合、すべての範囲を網羅的に勉強してしまいがちです。しかし、宅建は満点を取るのが求められる試験ではありません。
合格に必要なのは約7割の得点ですので、出題可能性の高い部分を学習しておけば、十分に合格点に達することのできる試験となっています。そのためにはどのような勉強法が最適なのでしょうか。
(1)学習範囲を絞り込む
独学の方にとって最も高いハードルとなるのが、学習範囲の絞り込みでしょう。宅建試験の出題範囲は膨大ですが、毎年その中から50問しか出題されません。
宅建の出題を分析していくと、過去問からの出題の割合は7割以上に及びます。つまり、過去の出題を徹底的に研究することで、効率的に学習することが可能です。無駄な時間を費やさず、不要な部分の学習を避けるためにも、出題可能性の高い部分に絞って勉強をする必要があるのです。
過去問の中から頻出分野を見極めた上で、出題される可能性の高い過去問に絞って学習していきましょう。
(2)正解しなければならない問題を確実に
たとえば「権利関係」の範囲は民法にとどまらず、区分所有法、借地借家法、不動産登記法など非常に幅広いです。それでも、この分野からは例年13~14問程度しか出題されず、範囲も決まっています。
また、「法令上の制限」に関しては難易度が高い問題が多い傾向があり、全問正解が困難です。例年、8問程度出題されていますが、正解数の平均は4問程度となっています。
わからない問題に対して必死に知識を得ようとするのではなく、絶対に正解しなければならない問題について確実に正解できるような勉強を行うことが重要です。
▼始める前に知っておきたい宅建の勉強法の注意点
4 宅建合格までのスケジュールを見積もろう
宅建試験は毎年1回、10月の第3日曜日の午後1時~午後3時の間で行われます。ここからは合格に向けた勉強スケジュールを考えていきましょう。
(1)過去問は3〜4周を目標に
過去問を繰り返し解き、過去問に取り組む回数を増やすようにすると良いでしょう。試験の過去問は、全体的に3〜4回は繰り返すように計画を立ててみてください。
権利関係の科目は、直前期の勉強では点数が上がりにくいと言われています。このことから、勉強は権利関係から始めるのが良いと言えるでしょう。
(2)直前期に向けて勉強時間を増やしていく
毎日3時間の勉強を続けるよりも、最初は2時間、慣れてきたら3時間、直前期にかけては4時間と、試験が近づくほど勉強時間を増やしていくのがコツです。
直前期の追い込みがしやすいと考えられている科目もあります。宅建業法、法令上の制限、その他の分野については、この時期にスピードを上げて学習するのもひとつの手かもしれません。
夏を過ぎると、徐々に試験本番が迫ってきて緊張感も高まってきます。この時期はとにかく過去問題をメインとして、ほぼ100点満点取れるまでになりましょう。
5 まとめ
・独学で宅建に合格することは可能である
・合格までに必要な勉強時間は300〜400時間
・まずは過去問を読み、全体像を掴んだら、ひたすら過去問を解く
・7割の得点で合格できるので、学習範囲を絞り込み、取りこぼしをなくするのがポイント
・試験日までは、計画的に勉強のスケジュールを組むこと