法学部なら特に有利!大学生が行政書士試験を受けるべき理由とは

行政書士

「大学生の時に、行政書士試験を取っておけばよかった」−−こんな風に考えたことがある受験生は少なくないのではないでしょうか。または「まだ大学生だけど、行政書士の資格は取れるだろうか」と考える方もいるかもしれません。

大学生は行政書士試験を受験できます! この記事では、大学生の行政書士試験の受験状況や資格取得のメリット、また大学生におすすめの教材についても、詳しく解説します。

1 大学生と行政書士試験

行政書士試験は法律系の国家資格試験ですが、数ある資格試験の中には受験資格が設けられているものもあります。

(1)大学生は行政書士試験を受験できる

行政書士試験には、学歴や実務経験などで制限を受ける受験資格が設けられていません。当然、大学生でも行政書士試験を受験できます。後述しますが、令和元年度行政書士試験の最年少合格者は、なんと15歳でした。

(2)大学生の受験者と合格者はどのくらい?

行政書士試験研究センター発表の試験合格者データには、その年の合格者・申し込み者の最年少・最年長が掲載されます。

令和元年度(2019年度)合格者試験結果

① 最年長合格者 79歳(男性)1名
② 最年少合格者 15歳(男性)1名
③ 最年長申込者 95歳(男性)1名
④ 最年少申込者 12歳(男性)(女性) 各1名

下表は、令和元年度(2019年度)合格者の年代別内訳です。

大学生の内訳については不明ですが、10代の合格率は男性で0.9%(合格者数37人)、女性は0.2%(合格者数14人)です。20代になると社会人も含まれるため、受験者数に関しては10代の10倍程になります。なお、合格者の内訳で最も多いのは30代で、受験生全体のおよそ3割を占めるとのことです。

10代 合計 男性 女性
受験者数 合格者数 受験者数 合格者数 受験者数 合格者数
平成29年度 558 51 343 36 215 15
平成30年度 553 56 370 42 183 14
令和元年度 545 45 364 37 181 8
20代 平成29年度 7,289 1,336 4,859 1,018 2,430  318
平成30年度 6,778 1,112 4,318 796 2,460 316
令和元年度 6,728 862 4,332 629 2,396 233

行政書士試験研究センターの資料を基に作表

▼こちらの記事も合わせてご覧ください。
行政書士試験の難易度・合格率は?勉強時間はどう使う?

(3)行政書士登録はどうすればよい?

行政書士試験に合格しただけでは、行政書士資格を取得したことにはなりません。行政書士として報酬を得るためには試験に合格するだけでは不十分で、行政書士会に入会して登録する必要があります。こうして初めて、行政書士の独占業務がおこなえるようになります。

しかし、注意すべきは行政書士法第2条の2の「欠格事由」です。ここには試験に合格しても資格を取得できない者の条件が挙げられていますが、その中には「未成年者」が含まれているのです。

また、行政書士試験に合格後一般企業に勤務する場合も、行政書士登録をしてはいけません。行政書士登録をおこなうにともない「行政書士として業務を遂行する義務」が生じるため、一般企業に就職する予定の合格者は行政書士登録はできないのです。

①行政書士など士業事務所に勤務する場合

行政書士会に登録する際、「個人事業主として登録」「行政書士法人として登録」「行政書士事務所の雇われ行政書士として登録」の3種類から選んで登録をおこないます。ですので行政書士事務所に就職する場合は、「行政書士事務所の雇われ行政書士として登録」を選択します。

②一般企業に勤務する場合

一般企業に勤務しながら行政書士業務をおこなうことはできません。もし一般企業への就職を目指しているなら、たとえ試験に合格しても行政書士登録はしないようにしましょう。

前述の通り、行政書士登録をおこなうには「個人事業主」「行政書士法人」「行政書士事務所勤務」の3通りの形態からしか選択できません。もしあなたが個人事業主として登録したのに、一般企業に勤務して会社のために行政書士の独占業務をおこなった場合は、「行政書士会の規則違反」 になって登録が抹消されてしまうのです。

合格したのに登録できなくても、行政書士の合格は一生ものなので心配しないでください。そもそも、行政書士登録の初期費用は30万円近くかかるため、学生には大きな負担です。一般企業に就職する場合は、登録は保留にしましょう。

2 合格した大学生の生の声

塾生情報局は、慶應義塾大学生向けの情報発信サイトです。慶應生視点で慶應生のために様々な情報を発信しているのですが、その中から行政書士試験の合格体験記を見つけました。大学生が行政書士試験を受ける上で大変参考になる箇所が多いので、いくつか引用して紹介します。

(1)法学部の学生なら勝算あり!

行政書士試験に受かるには法学部かどうかで合格のしやすさが変わってきます。言うまでもなく法学部は「民法」「行政法」「会社法」といった行政書士試験の主要科目を大学の講義で学んでいます。(中略)法学部であれば行政書士試験に受かるのは難しくありません。

実に心強いアドバイスです。法学部以外の学生に向けては、次のようなアドバイスをしています。

大学のカリキュラムやシラバスを確認して、できるようであったら「民法」の講義をとることをおすすめします。大学の民法の講義は行政書士試験で問われる知識より深くより学問的です。大学の定期試験を受けると行政書士試験の民法の問題が簡単に感じます。

なお、こちらの合格者によると、大学の提供する法律の講義はどこも秀逸で、大学のランクは関係ないとのことです。

(2)「民法」が試金石?

行政書士試験の柱である「民法」の勉強につまづくと、確実に合格できません。民法の理解が「会社法」や「行政法」につながります。民法がどうしても理解できなければ、行政書士試験の勉強をきっぱりとやめるのも手です。その場合は比較的簡単な宅建にチャレンジし合格した後のステップアップとして行政書士に再チャレンジしましょう。

受験生泣かせの民法は、やはり試金石的な科目なのでしょう。民法につまずいた場合は宅建にシフトすべきという、現実的なアドバイスもしています。

(3)「判例六法」を活用

択一試験は、答えが1つしかありません。どうしてその問いが誤りなのか合っているのかを法律の条文に照らし合わせて、1つずつチェックしていきます。手間はかかりますが、納得しながら勉強を続けられます。判例対策は、「判例六法」という六法があり、その六法には、各条文に対応した判例が記載されています。出題された判例をチェックしながら、問題を解いていけば、だんだん正答率が上がっていきます。

とても実践的なアドバイスであると同時に、地道な努力が合格への王道なのだと教えられます。

大学生は、例え法学部の学生でなくても、何らかの方法で民法を選択することができます。時間的余裕といい、大学生は行政書士試験に対してかなりのアドバンテージを持っていることが分かります。

3 大学で行政書士資格を取得するメリットとは?

「大学生のうちに行政書士資格に合格すると就職に有利!」という謳い文句はキャンパスに溢れていますが、果たしてどのように有利なのでしょうか。

(1)就活でアピールできる

行政書士試験に合格したことを就活でアピールできる業界は「不動産業界」「金融業界」「士業業界」の3つだと言われます。

行政書士は「書類のプロ」とも呼ばれ、許認可申請作成など担当できる書類は1万以上と言われます。この資格を持っていると、民法や行政法をはじめ様々な法律に精通しているというアピールができます。

もしあなたがアルバイトができる状況なら、試験合格前でも後でも、法律関係の事務所などでアルバイト先を探しましょう。求人は多くはないでしょうがアルバイトができれば、机上の理論にとどまらず、素晴らしく豊かな実務経験を積めるはずです。

(2)ステップアップの足掛かりになる

行政書士試験の合格を足掛かりにして、更なるキャリア形成をおこなうのも良いでしょう。次は司法書士や社会保険労務士といった、更に上の資格の取得に挑戦するのもおすすめです。

いまや、1か所で様々な士業と連携したサービスを提供できる「ワンストップサービス」が求められる時代です。ダブルライセンスは、あなたのキャリアを将来性豊かなものにしてくれるでしょう。

公務員試験受験を視野に入れるのも良いでしょう。行政書士の勉強は、公務員の筆記試験と重複する部分が多いため、知識が非常に役立ちます。

(3)独立開業も視野に入れられる

大学卒業後にいきなり行政書士として独立するのは、非常に稀なケースでしょう。しかし卒業後直ぐには難しくても、将来的には独立するというビジョンを持つのはおすすめです。

①行政書士資格は、就活よりも独立開業に将来性が

行政書士資格を就活に活かそうと思って取得したら、実はあまり効力がなかったという話も聞きます。

就職に有利だろうという、漠然とした動機で行政書士試験を受けて合格しても、実は本当に行政書士になりたいわけではない人もいるでしょう。そういう人ほど「なーんだ、行政書士資格なんて、そんなに就職に有利じゃなかった」と思うのではないでしょうか。

一般企業に就職しても、行政書士の資格はほとんど役立つことがないのが実状です。行政書士の独占業務は、所轄官公署などに提出する許可申請書類の作成などです。行政書士事務所や他の士業事務所に就活すれば役立つものの、一般企業に就職してもほとんど役立たない資格なのです。

法律のスペシャリストという観点からは、やはり法科大学院卒の人や司法書士、弁護士資格保有者に負けてしまいます。

しかし、資格一本で独立してやっていこうとしたとき、この資格の多くのアドバンテージが見えてきます。

②行政書士は、成功しやすいビジネスモデル

独立開業するなら、行政書士はかなりおすすめの資格だと言えます。なぜなら、行政書士は失敗しにくいビジネスモデルであると言えるからです。その根拠は、以下の行政書士の特性です。

Ⅰ 在庫を持たなくてよい
Ⅱ 定期的な収入がある
Ⅲ 資本ゼロ、あるいは小資本で始められる

ビジネスを始めるにあたり、初期費用が少なくて済むのは大きな魅力です。また、行政書士は顧客を獲得すれば、その後も業務の守備範囲の広さから様々なサービスを提供して、収益に結びつけることができます。結論から言うと、行政書士は失敗する可能性が他のビジネスに比べて低いのです。

どの業界でも、今後は、インターネットで実現できる集客や取引をどこまで広げられるかが成功の鍵になります。ネット展開すれば、これまで潜んでいた顧客層が現れてくるかもしれません。デジタルネイティブである大学生は、これまでにない新しい形を行政書士業務に創造していける可能性に溢れているのです。

4 サマリー

大学生が行政書士試験に合格するメリットについて、お分かり頂けましたか?

特に、法学部で学んでいる大学生は非常に有利なので、ぜひ挑戦して頂きたい資格試験です。公務員試験受験を検討中の方も、まず業務の親和性が高い行政書士試験に挑戦してみるのはいかがでしょうか。

5 まとめ

  • 行政書士試験には受験資格が設けられていないため、大学生ももちろん受験できる。
  • 行政書士法第2条の2「欠格事由」は、未成年者は行政書士登録できないと定めている。
  • 行政書士試験に合格後一般企業に勤務する場合、登録をおこなうと「行政書士として業務を遂行する義務」が生じるため、登録不可。
  • 行政書士の合格は一生ものである。
  • 法学部は行政書士試験の主要科目を大学で学ぶため、行政書士試験に合格しやすい。
  • しかし民法がどうしても理解できなければきっぱりとやめるのも手である。
  • 大学生にピッタリの講座「資格スクエア」はスマホ完結型オンライン学習講座である。
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