行政書士試験で出題される行政法では、行政作用について定められています。
行政機関が定める一般的抽象的法規範を、行政立法といいます。
本来、国の法律は国会によって制定されるものだとされているのですがそれは不可能であるため、国会の定める「法律」では大体の目標や内容を、その細部は専門家集団である行政が定めるということにしたのです。
行政立法には、国民を拘束する『法規命令』と国民を拘束しない『行政規則』があります。
法規命令は『執行命令』と『委任命令』に、行政規則は『訓令』『通達』『告示』に分かれます。
1. 法規命令
「法規」たる性質を有し、相手方国民の権利・義務と同時に行政主体も拘束する命令を『法規命令』といいます。
紛争が生じた場合には裁判所がこれを適用し、法律を補完します。
2. 執行命令
法律執行のための細目的手続に関する規定を『執行命令』といいます。
例えば、国民が一定の行為をする場合には法律上、行政庁の許可が必要であるという旨が定められていることが多いです。しかし法律では、その許可をどのようにもらえばよいのか、どのような手続(申請書の書き方や送り先など)をすればよいのかなど、細かいことに関しては決められていません。そういったことは法律ではなく、政令以下行政立法に任されることがほとんどです。
執行命令には個別の法律の根拠は必要なく、組織法上の一般的授権があれば良いとされています。
これを明文化しているのが国家行政組織法12条第1項です。
国家行政組織法12条第1項
各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。」および国家行政組織法13条第1項「各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。
3. 委任命令
法律の委任により、私人の権利や命令、義務の内容自体を定めるものを『委任命令』といいます。
本来は法律が定めるべき内容でも、法律では抽象的な規定に留めておき、具体的な内容は政令などの行政立法に委ねるということです。
憲法41条は国会が唯一の立法機関だと定めているため、行政に全てを任せっきりにするという包括的・白紙的委任は、立法権の放棄となるため許されません。委任するためには個別的に委任しなくてはならず、特に罰則の倍には罪刑法定主義の理念に基づき、個別かつ具体的な委任が必要になります。
ただ、判例ではもっと緩いものとなっており、国家公務員法で国家公務員に禁止されている「政治的行為」の人事院規則への包括的な委任を合憲としています。
また、銃刀法による委任により、所持禁止の例外とされる文化財的価値のある刀剣類において、省令で日本刀のみ鑑定基準が定められ外国刀剣が適用除外とされることについても、委任の範囲内となり合憲である、ともしています。
しかし一方で、被拘留者と14歳未満の者との接見に関する制限を、監獄法が命令(規則)に委任していることに対し、「規則120条は、法の容認する接見の自由を制限するものとして、法50条の委任の範囲を超えた無効のものというほかない」ともしています。
委任命令は授権法規と一体となり効力を発揮するため、その根拠となる元の法律、授権法規が執行すると、法律によって特段の定めがなされてない限り、委任命令も執行することになります。
4. 法規命令の発行
法規命令は法律の委任(授権)を必要とするため、制定されたときは官報(公報)で公布、施行されてはじめて効力が生じることになります。
公布を定めた法律はなく、慣習上で官報・公報とされており、一般の希望者が閲覧・購読できる状態になったタイミングが公布時点とされます。