行政書士試験で出題される行政法では、行政行為の効力について定めています。
行政行為の効力には、『公定力』『不可争力』『自力執行力』『不可変更力』があります。
1. 公定力
行政行為が法令に違反するものだったとしても、権限のある行政機関や裁判所によって正式に取り消されるまでは一応有効なものとして扱い、国民や関係行政庁を拘束する効力を公定力といいます。
行政は法律に基づいてなされるものだという原理があるため、違法な行政行為は本来無効なのですが、何が違法かどうかの判断は難しく私人に任せるわけにもいきません。
適法かそうではないかの争いがあっても、正式な取消がなされるまでは有効なものとして拘束力を持つようにしているのです。
たとえば、リフォーム業者から不当に高い代金を請求されたとしても、それが不当だと思うのならば支払を拒絶することが出来ますし、もし支払った場合でもその無効を主張し、返還を裁判所に請求して違法の判断が下されれば、その返還を命ずることが可能です。
しかし税務署長が違法な課税処分をした場合は、それが国民にとっていくら違法なものでも支払は拒めないのです。
拒絶し続けても強制的に徴収されますし、支払った場合には不当利得として返還請求することは出来ず、法的に有効である以上は裁判所も返還を命ずることが不可能となります。
返還請求をする場合には、まず課税処分自体を取り消して公定力を消滅させないと請求が認められないということになります。
しかし公定力を無限に認めてしまうと、国民の権利や利益が危うくなってしまう可能性があります。
そのため、行政行為の違法性が「重大」かつ「明白」という場合にはそもそも公定力ははたらかないものとされ、誰でも無効なものとしてその行為を無視出来るということになっています。
2. 不可争力
行政行為に不服があっても、一定の不服申立期間、または出訴期間経過後はもはやその行為の効力を争えなくなるという効力が『不可争力』です。
行政法上の法律関係の早期安定の要請から認められました。
ちなみに、無効とされる行政行為には公定力同様不可争力もはたらきません。
不服申立期間は、処分があったことを知った日の翌日から60日以内、行政事件訴訟は処分があったことを知った日から6ヶ月以内に行う必要があります。
しかし行政庁については、これらの期間が過ぎてからも、自ら職権によって取り消すことが可能です。
3. 自力執行力
行政行為によって命じられた義務を国民が履行しない場合、行政庁は裁判判決を得ず、義務者に対して自ら強制執行をすることで義務の内容を実現出来る効力を『自力執行力』といいます。
行政の円滑さ、迅速さのために認められており、行政機関には警察などの執行機関が存在しています。
しかし国民に対して直接力を行使することになるため、行使にあたっては法律の根拠が必要になります。
行政行為による義務のすべてにおいて、自力執行力による担保があるわけではないのです。
4. 不可変更力
権限のある行政機関が一度下した判断は、行政庁が自ら取消・変更することは出来ないという効力を『不可変更力』といいます。
行政需要は目まぐるしく変化し、複雑化・多様化していくため、行政は機敏に、そして柔軟に対応していく姿勢が求められます。
そのため一般の行政行為には不可変更力ははたらかず、原則自由に取消や変更をすることが可能です。
では、不可変更力のはたらく行為はどのようなものなのでしょう。
不服申立てに対する決定や裁決などの紛争裁断行為は、行政による裁判判決のようなものです。
決定や裁決が簡単に変わってしまってはいつまでも紛争が解決しないでしょう。
そういった場合に不可変更力がはたらき、裁決庁自らがその決定や裁決を変更・取り消すことが出来なくなるのです。